キャリア

SIerのSAPエンジニアからITコンサルのSAPコンサルへ|年収・働き方・キャリアの出口が変わる話

目次

はじめに:SIerのSAPエンジニアがコンサルを意識し始める瞬間

TISやDTS、SCSKみたいな中堅〜大手SIerでSAPプロジェクトをやっていると、ある時期からこういう疑問が湧いてくるんですよね。「自分は要件を整理して設計してテストしてリリースして、それなりに動かせるようになった。でも、ここから先のキャリアはどこに行くんだろう」と。

そのタイミングで視野に入ってくるのがITコンサル側のSAPコンサルタント職です。アクセンチュア・アビーム・クニエ・PwC・デロイト・電通総研あたりですね。同じ「SAPの仕事」なのに、中身も年収もキャリアの出口もけっこう違います。僕自身もSIer→ITコンサルに移って年収が約170万円上がりました。今回はその実体験ベースで、何がどう変わるのかを整理します。

役割の違い:何を主戦場にするか

一番大きな違いは「どのフェーズに重心があるか」です。

観点SIerのSAPエンジニアITコンサルのSAPコンサル
主戦場フェーズ基本設計〜開発〜テスト〜運用構想策定〜要件定義〜Fit to Standard
クライアント対応開発リーダー経由が多い業務部門と直接議論する
アウトプット設計書・コード・テスト結果As-Is/To-Be資料・意思決定資料・要件定義書
評価される観点品質・納期・安定運用クライアントの意思決定を前に進めたか
自走の必要度指示された範囲を確実にこなす論点設計・タスク分解・スケジュール管理を自分で組む

SIerは「決まったものを正しく作る」のが価値で、コンサルは「何を作るかを決める/決めさせる」のが価値です。なので同じSAPでも頭の使い方がかなり違います。SIer時代に「上流に出たいけど機会がない」と感じていた人ほど、コンサルに移ると最初の1年で景色が一変します。

なぜそうなるか(why so)。コンサル側はそもそもプロジェクトの最上流から入る契約形態が多く、要件定義以前の「そもそも何をやるべきか」のフェーズが本業だからです。SIer側は実装以降を担うことが多く、上流に関わりたくても契約構造上ムリ、というケースが少なくありません。

担当フェーズ:上流に行くと何が起きるか

上流フェーズに行くと、業務知識の比重が一気に増えます。SIer時代は「FIモジュールの設定の話」だったものが、コンサル側では「会計方針そのものをクライアントの経理部長と議論する」に変わります。SAPの設定知識より、会計購買販売など業務側のロジックを語れるかが評価の中心になります。

これがしんどいかと言うと、慣れれば全然いけます。むしろSIerで設定をいじり倒した経験は、業務の議論をするときに「で、それシステム的にはこう動くから無理ですね」みたいな現実的な落としどころを示す武器になります。SIer出身者の強みはここなんですよね。

年収レンジの違い

具体的な数字を出すと、おおよそこんな感じです(ポジション・経験により幅があります)。

年次レンジSIer SAPエンジニアITコンサル SAPコンサル
経験3〜5年500〜650万700〜900万
経験5〜8年600〜800万900〜1,200万
マネージャー級800〜1,000万1,200〜1,800万
シニアマネージャー以上1,000〜1,300万1,500〜2,500万

僕の場合は転職の瞬間に約170万円アップでした。同じスキルセットなのに、です。なぜそんなに違うかというと、コンサルファームの単価がSIerより高く設定されていて、その分が個人の給与にも反映される構造だからです。あとは年俸制+ボーナスありの形態が多く、評価次第で上がり幅も大きい。

ただし注意点もあります。コンサルは残業代が基本込みの年俸制が主流なので、SIer時代に残業代でかなり稼いでいた人は「基本給は上がったけど手取りはあまり変わらない」みたいな現象も起き得ます。提示年収の中身(残業含むのか別途か、賞与の比率がどれくらいか)は必ず確認した方がいいです。

キャリアの出口:ここが一番気になるポイント

SIer→コンサルを考える人が一番気にするのが「コンサルから先、どこに行けるんだろう」という出口問題ですよね。実際、コンサルに来る人の多くが「コンサルを終のキャリアにする気はない」前提で動いています。

主な出口はこんな感じです。

  • 事業会社の社内SE/IT企画:一番人気の出口。年収を維持したまま働き方を緩めたい人向け
  • CIO/IT部門マネジメント:マネージャー以上の経験を活かして事業会社のIT責任者に
  • 同業他社のコンサル(より上のグレードへ):年収を更に上げたい人向け
  • フリーランスSAPコンサル:単価100〜200万円/月レンジ、独立志向の人向け(SAPフリーランス独立ガイドで単価相場・案件獲得・リスク対策を整理)
  • スタートアップCTO/CIO:少数だが、SAP導入経験を持つ人材を欲しがる成長企業はある

特に多いのが「最終的に事業会社の社内SEに行きたいから、その途中着地点としてコンサルを使う」という戦略です。これ、めちゃくちゃ合理的で、SIerからいきなり事業会社に行くより、一度コンサルを経由した方が「上流経験あり」のラベルがついて入れる事業会社の幅が広がります。年収レンジも、SIerからの直接転職より100〜200万円高い水準で着地できることが多いです。

なぜそうなるか(so what)。事業会社の社内SE求人は「業務要件を整理してベンダーをマネジメントできる人」を求めていて、これってまさにコンサルの仕事内容そのものだからです。SIerの設計・開発スキルだけだと「ベンダー側の人」に見えてしまい、社内SEへの転身がやや難しくなります。

向いてる人・向いてない人

正直に言うと、コンサルは合う合わないがはっきり分かれる職種です。

向いてる人

  • 自分で論点設計してタスク分解して、スケジュールも自分で引きたい
  • 年収も裁量も上げて、ガンガン頑張りたい
  • 経営層・部長層と議論する機会を増やしたい
  • 数年単位でいろんな業界・業務を経験したい
  • 最終的に社内SEや事業会社のIT責任者を狙っていて、その布石を打ちたい

向いてない人

  • 仕事は基本的に指示された範囲をこなす方が落ち着く
  • プロジェクトをコロコロ変わるより同じシステムを長く運用したい
  • 残業時間を絶対に抑えたい(コンサルもホワイト化は進んでいるが、繁忙期は山がある)
  • プレゼン・資料作成より手を動かす作業の方が好き

受け身で仕事をこなしたい人にはコンサルは向きません。逆に「自分でリードしていきたい」タイプには最高の環境です。年収・裁量・経験値、全部がSIer時代より一段上がります。

転職活動でつまずきやすいポイント

SIerからコンサルに移る人がよく引っかかるのがこのあたりです。

  1. 職務経歴書で「何を設定したか」しか書けない → コンサルは「何を意思決定して、何を変えたか」を書く必要がある
  2. ケース面接の準備不足 → ファームによってはケース面接(その場で論点整理させる)が出る
  3. 複数ファームを並行で受けない → 1社ずつだと比較ができず、年収交渉のカードもなくなる
  4. エージェント選びを失敗する → SAP案件に強いエージェントを使わないと、ミスマッチな求人ばかり来る

特に4番は重要です。SAPコンサルの転職市場は専門性が高いので、SAP案件に強いハイクラス向けエージェント(JAC・ビズリーチ経由のヘッドハンター・ムービン等)を使うと話が早く進みます。普通の総合エージェントだと、そもそもファーム側のSAP求人事情を分かっていないことがあります。

まずはSAPに強いエージェントに登録するところから

ここまで読んで「ちょっと自分の市場価値を測ってみたい」と思った人は、求人サイトを眺めるより先に、SAP案件に強いハイクラス転職エージェントに登録するのが近道です。理由は単純で、ファーム側のSAPポジションの大半は非公開求人として動いているからで、自分で求人サイトを検索しても出てこないことが多いからです。

エージェントを使うと、こちらの経歴を見てから「このファームのこのポジションが合う」「年収帯はこのくらいで提示できる」といった具体的な話までしてくれます。受けるかどうかは登録後に決めればいいので、まずは選択肢を見るためだけに動くのも全然アリです。SIer内でずっと働いていると見えなくなる「外の年収相場」を知るだけでも価値があります。

ポイントは、必ず2〜3社並行で使うこと。1社だけだと送られてくる求人が偏りますし、最終的な年収交渉のときに「他社からはこれくらいの提示が来ています」というカードが切れず、本来取れたはずの100万・200万を取り逃がします。僕の170万アップも、複数エージェント経由で複数オファーを比較できたから実現した数字です。

よくある疑問(FAQ)

Q. ABAPしか書いてこなかった人もコンサルに行けますか? A. 行けます。ファーム側は「業務側にも興味を持って動ける人」を歓迎しているので、ABAP出身でも面談で業務理解の話ができれば普通に通ります。

Q. コンサルに行ったら開発はもうやらないんですか? A. ファーム・ポジションによります。アクセンチュアのテクノロジー職などは開発も含めて担当しますし、ピュアコンサル職だと設計までで止まります。求人票で確認してください。

Q. 英語は必要ですか? A. グローバル案件中心のファームでは必要、ドメスティック中心ならほぼ不要です。ファームによって温度差が大きいので事前確認推奨です。

Q. コンサルに行ったら激務になりますか? A. 昔ほどではないです。働き方改革で22時以降原則退館とかのファームも増えています。ただし提案期・要件定義期・カットオーバー直前は山がきます。

Q. 何歳まで転職可能ですか? A. 30代後半でも普通にいけます。40代でもマネージャー以上の経験があれば需要あります。コンサルはむしろシニア層を歓迎しているファームも多いです。

まとめ

  • SIer→ITコンサルは「決まったものを作る」から「何を作るかを決める」へのシフト
  • 年収レンジはおおよそ200〜400万円アップ、僕の場合は約170万円アップだった
  • 上流フェーズ中心、業務知識と論点整理力が武器になる
  • キャリアの出口は事業会社の社内SE/IT企画が人気、コンサルを「途中着地点」にする戦略は合理的
  • 自走できる人・上を目指したい人に向く、受け身タイプには向かない
  • 転職時はSAP案件に強いハイクラスエージェントを複数並行で使うのが鉄則

SIerに長くいて「もっと上流をやりたい」「年収を上げたい」「将来は社内SEで腰を据えたい」のいずれかを思っているなら、一度ITコンサル側を見てみる価値は大いにあります。受けるだけタダなので、自分の市場価値を測るつもりで動いてみるのがおすすめです。

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