はじめに
Fioriアプリは「ただのWebアプリ」ではなく、Fiori Launchpad(FLP)というランタイム上に並べて使うことが前提です。ユーザーはLaunchpadにログインし、自分のロールに紐づいたタイルをクリックして業務を始めます。
Launchpadはアプリを表示する単なる枠ではなく、権限制御・タイル割り当て・通知・ナビゲーションの中枢です。この記事では、運用担当者・開発者が知っておくべき基本構成を整理します。
Launchpadの構成要素
1. タイル(Tile)
Launchpadのホーム画面に並ぶクリック可能なアイコンです。各タイルは1つのFioriアプリに紐づいており、クリックするとアプリが起動します。
タイルには種類があります:
- Static Tile:固定の画像/文字のタイル
- Dynamic Tile:バックエンドから数値を取ってきてリアルタイム表示(未処理件数など)
- News Tile:お知らせ表示
- KPI Tile:分析指標の表示
2. ターゲットマッピング(Target Mapping)
「このIntent(操作意図)が呼ばれたら、このアプリを起動する」という対応付けです。Intentは SalesOrder-display のような Semantic Object + Action の組み合わせで表現されます。
クロスアプリナビゲーション(アプリAから別アプリBへ遷移)もこのIntent経由で行われるため、アプリ間連携の要です。
3. カタログ(Catalog)
タイルとターゲットマッピングをグルーピングしたコンテナです。業務機能単位(例:「購買発注」「販売管理」「在庫照会」)で整理します。
4. グループ(Group)※従来モード
ユーザーのホーム画面にカタログのタイルを並べるグルーピング機構です。「よく使うアプリ」「月次処理」のようなユーザー中心の分類です。
5. スペース&ページ(Space and Page)※新モード
S/4HANA 2020以降で導入された新しい管理モードです。従来のグループに代わり、「スペース」が大分類、「ページ」が小分類という2階層構造になります。現場ユーザーが整理しやすく、セクションごとにタイルを分類できます。
カタログ・グループ・ロールの関係
flowchart LR A["アプリ
Fiori App"] --> T["タイル
+ Target Mapping"] T --> BC["ビジネスカタログ
機能単位"] BC --> BR["ビジネスロール
PFCG Role"] BR --> U["ユーザー
担当者"] U --> FLP["Fiori Launchpad
ホーム画面"]
標準的な割り当てフロー
- SAPが提供する「ビジネスカタログ」(例:SAP_MM_BC_REQ_PROCESS_PC)を確認
- PFCGで「ビジネスロール」を作成し、必要なビジネスカタログを割り当て
- ユーザーにビジネスロールを割り当て
- ユーザーがLaunchpadにログインすると、ロールに含まれるタイルが自動表示
従来モード vs スペース&ページモード
| 観点 | 従来(カタログ/グループ) | スペース/ページ |
|---|---|---|
| 導入時期 | Fiori 1.0〜 | S/4HANA 2020〜 |
| 構造 | カタログ→グループ→タイル | スペース→ページ→セクション→タイル |
| 管理者 | IT部門主導 | 業務部門主導も可能 |
| カスタマイズ | PFCGロール経由 | スペースエディタでGUI |
| 推奨 | レガシー | 新規プロジェクト |
S/4HANA 2021以降の新規プロジェクトでは、スペース&ページが標準推奨されています。従来のグループモードと併存も可能ですが、両方有効にすると管理が複雑になります。
ショートバーとグローバルナビゲーション
Launchpad上部には以下の機能が集約されています:
- ホームボタン:Launchpadトップへ戻る
- Search:アプリ・データの横断検索
- 通知:バックグラウンドジョブ結果やワークフロータスク通知
- Me Area:ユーザー設定、テーマ切替、ログアウト
- アプリファインダー:利用可能な全アプリ一覧
これらはFiori 2.0以降で統合されたナビゲーション体験です。
設定ツール
Fiori Launchpad Designer(FLPD)
従来のカタログ・グループ・タイルを管理するツールです。Tコード /UI2/FLPD_CUST(カスタマイズ)または /UI2/FLPD_CONF(構成)から起動します。
Launchpad Content Manager(LCM)
スペース&ページモードを管理する新しい管理ツールです。Fiori Launchpadから直接GUIでスペース・ページを編集できます。
管理運用の詳細
詳しい運用観点はFiori Launchpadサイト運用で整理しています。
よくある疑問
Q. カスタムアプリのタイルを追加するには?
A. カスタムアプリに対してTarget Mappingを作成し、カタログに追加し、ビジネスロールに割り当てます。PFCG + FLPDの2ツール操作が必要です。
Q. Dynamic Tileの数字はどこから取ってきますか?
A. ODataサービスを指定し、$count クエリや指定項目を返します。バックエンド側にDynamic Tile用のCDSビューまたはOData実装が必要です。
Q. 非表示にしたタイルを復活させるには?
A. ユーザーがMe Area→Home Page Settings→Reset、または管理者がビジネスロールを再割り当てします。
Q. スペース&ページに移行するメリットは?
A. タイルの分類が細かくできる、セクションごとの視認性が上がる、業務部門自身が編集できる、という3点が大きいです。
まとめ
- Launchpadはアプリを表示する枠ではなく、権限と配置の中枢
- タイル・ターゲットマッピング・カタログ・グループ(または スペース/ページ)・ビジネスロールが基本構成
- 新規はスペース&ページモード推奨、従来モードと併存も可
- ビジネスカタログ→ビジネスロール→ユーザーという割り当てフローが定番
- 設定はFLPDまたはLaunchpad Content Managerで行う
次はFiori Launchpadサイト運用で、Work Zoneや運用面を深掘りします。
Launchpadの構成を理解した次のステップとして、実際にFioriアプリを作ってタイルに登録するところまで体験すると全体像がつながります。UI5とCAPを使ったアプリ構築からBTPデプロイまでを通して学べます。