はじめに
Fiori Launchpadは1つだけの製品ではなく、複数のホスティング形態・運用形態があります。同じ「Fiori Launchpad」という言葉でも、S/4HANA内で動く形態とBTP上のクラウドサービスでは管理方法も機能もまったく違います。
この記事では、現場で遭遇する3つの形態と、それぞれの運用タスクを整理します。基本構成はFiori Launchpadの仕組みを先に確認してください。
3つのLaunchpad形態
1. Embedded Deployment(S/4HANA組み込み)
S/4HANAシステム自身がFiori Launchpadをホストする形態です。SAP GatewayがS/4HANAに統合されており、別システムを立てずにLaunchpadが動きます。
- 対象:S/4HANA On-Premise、S/4HANA Cloud Private Edition
- URL例:
https://<s4host>/sap/bc/ui5_ui5/ui2/ushell/shells/abap/FioriLaunchpad.html - 管理:PFCG(ロール)+ FLPD(タイル・カタログ)
2. Launchpad Service(BTPサブスクリプション)
SAP BTP Cloud FoundryまたはBTP ABAP Environment上で動くLaunchpadサービスです。複数のバックエンド(S/4HANA Cloud、On-Premise、外部サービス)を統合するのに使います。
- 対象:BTPテナント上のマルチシステム統合Launchpad
- URL例:
https://<tenant>.launchpad.cfapps.eu10.hana.ondemand.com/ - 管理:BTPコックピット + Launchpad Site Manager
3. SAP Build Work Zone(旧 SAP Work Zone)
BTP上のさらに高機能な統合ワークスペースです。Fiori Launchpad機能に加え、コンテンツ管理、ウィジェット、ソーシャル機能、カスタムポータルデザインなどが統合されています。Launchpad Serviceの上位版と考えられます。
- Standard Edition:純粋なマルチシステムLaunchpad用
- Advanced Edition:コンテンツ管理・ウィジェット・ポータル機能付き
- 管理:Work Zoneコックピット
形態別の構成図
flowchart LR
subgraph S4["S/4HANA単体"]
FLP1["Launchpad
Embedded"] --> APP1["S/4標準Fioriアプリ"]
end
subgraph BTP["SAP BTP統合"]
FLP2["Launchpad Service
or Work Zone"] --> APP2["複数システムの
アプリを統合"]
APP2 --> S4B[("S/4HANA Cloud")]
APP2 --> SF[("SuccessFactors")]
APP2 --> CUS[("カスタムアプリ")]
end単一のS/4HANAだけで完結するならEmbeddedで十分ですが、複数のSAP製品を横断する「1つのポータル」が必要ならLaunchpad ServiceまたはWork Zoneを採用します。
運用管理タスク
日次〜週次
- ユーザーからの「アプリが表示されない」問い合わせ対応(権限の確認)
- Dynamic Tileの数値が更新されない問題の調査
- エラー通知・バックグラウンドジョブの監視
月次〜四半期
- 新規ユーザーのロール割り当てと初期設定
- カタログ・タイル構成の見直し
- 不要タイルの削除とパフォーマンス最適化
- Fioriテーマの更新(Horizonへの切替等)
リリース時
- 新しいFioriアプリのカタログ追加
- ビジネスロールの作成・更新
- スペース&ページの構成変更
- エンドユーザーへの変更通知
BTP Work Zoneの追加機能
Work Zone Advanced Editionでは、通常のLaunchpadにない機能が使えます:
- Pages:カスタムポータルページ作成
- Widgets:埋め込み可能な情報部品
- Workspaces:部門別のワークスペース
- Content Management:ニュース・ドキュメント配信
- Gamification:バッジ・ランキング等のエンゲージメント機能
ただし機能が豊富な分、設計・運用の複雑度も上がります。真に必要な企業のみ採用するのが無難です。
マルチシステム統合の注意点
BTP Launchpad Serviceで複数のバックエンドを統合する場合、以下の設計が重要です:
- Destination設定:各バックエンドへの接続定義
- Single Sign-On:BTPと各システム間の認証連携(SAML / OIDC)
- Content Package:各システムから取得したタイル・カタログの管理
- ナビゲーション:システムを跨ぐIntentベースナビゲーション
詳しい認証・Destinationの話はSAP BTPの全体像も参考にしてください。
よくある疑問
Q. Embedded LaunchpadとLaunchpad Service、両方動かせますか?
A. はい。単一S/4HANAを直接使う利用者にはEmbedded、複数システム統合ポータルが必要な利用者にはBTP側、と使い分けることができます。
Q. Work Zone StandardとAdvancedの違いは?
A. Standardは純Launchpad機能のみ、Advancedはコンテンツ管理・カスタムページ・ウィジェット・ポータル機能を含みます。ライセンス形態が違うので契約見直しが必要です。
Q. 旧SAP Portalの後継はどれ?
A. Work Zone Advanced Editionが後継です。旧Portalのコンテンツ管理機能が引き継がれています。
Q. カスタムテーマは作れますか?
A. UI Theme Designerで独自テーマを作成し、Launchpadに適用できます。ただしHorizonテーマに寄せる方が将来のアップグレード対応が楽です。
まとめ
- Fiori Launchpadには Embedded / Launchpad Service / Work Zone の3形態がある
- 単一システムならEmbedded、複数統合ならBTP形態、高機能ポータルならWork Zone Advanced
- 運用タスクは日次(問い合わせ対応)〜四半期(カタログ見直し)〜リリース時(新アプリ追加)の周期で発生
- BTP形態はDestination・SSO・ナビゲーション設計が複雑化する
- Work Zone Advancedは旧SAP Portalの後継機能を持つ
次はBusiness Application Studio入門で、これらを開発する環境を見ていきます。
Launchpadの運用を理解した上で、実際にFioriアプリを作ってBTPにデプロイする一連の流れを体験すると、運用タスクの意味がより具体的に見えてきます。約15時間のハンズオン形式で実装力がつきます。