一言で
請求伝票タイプとは、SAPにおける請求伝票(Billing Document)の種類と処理ロジックを制御する4桁のキーです。通常請求(F2)・貸方メモ(G2)・借方メモ(L2)・プロフォーマ請求など、請求書の性質ごとに別のタイプを使い分けます。
なぜ請求伝票タイプが必要か
請求書には「通常の販売請求」だけでなく「返品による返金(貸方メモ)」「価格修正による追加請求(借方メモ)」「輸出用プロフォーマ請求」など多様な種類があります。請求伝票タイプは、各請求の会計処理・番号範囲・出力帳票を分岐させる制御キーとして機能します。
請求伝票タイプがないと、次のことができません。
- 売上計上と返金処理の会計仕訳を分けられない
- 通常請求と貸方メモの伝票番号を別体系で管理できない
- 請求書PDFのレイアウトを種類別に変えられない
- 会計転記なしのプロフォーマ請求(通関用)を作れない
標準の請求伝票タイプ
flowchart LR DL[納入伝票
Delivery] --> F2[F2
通常請求] SO[受注
Sales Order] --> G2[G2
貸方メモ] SO --> L2[L2
借方メモ] DL --> F8[F8
プロフォーマ請求] F2 --> FI[会計連携
BKPF/BSEG] G2 --> FI L2 --> FI F8 -.->|会計転記なし| FI style F2 fill:#f0f6ff,stroke:#0053F4,stroke-width:2px,color:#0053F4
請求伝票タイプは納入または受注を参照元として作成され、タイプごとに会計転記の有無・仕訳ロジックが異なります。
主な標準タイプ一覧
| タイプ | 名称 | 用途 |
|---|---|---|
| F1 | 受注関連請求 | 納入を介さずに受注から直接請求(サービス業など) |
| F2 | 納入関連請求 | 最も一般的な物販の通常請求 |
| F5 | プロフォーマ(受注参照) | 通関用の事前請求書(会計転記なし) |
| F8 | プロフォーマ(納入参照) | 輸出通関用(会計転記なし) |
| G2 | 貸方メモ(Credit Memo) | 返品・値引きによる返金 |
| L2 | 借方メモ(Debit Memo) | 価格不足・追加請求 |
| RE | 返品請求 | 返品納入と連動した返金処理 |
| IV | 会社間請求 | 会社コード間取引の請求 |
技術的な位置づけ
- SDモジュールの請求(Billing)プロセスの制御キー
- 請求伝票のヘッダに記録され、その伝票の性質を決定する
- 番号範囲・会計転記可否・貸方/借方区分・請求元参照(受注or納入)を設定
- 会計連携時に会計伝票タイプ(RV:請求伝票)に変換される
カスタマイズパス(IMG:Implementation Guide、SAPの設定ガイド)
SPRO > 販売管理 > 請求 > 請求伝票 > 請求伝票タイプの定義
SPRO > 販売管理 > 請求 > 請求伝票 > 番号範囲の定義
SPRO > 販売管理 > 請求 > 請求伝票 > 請求タイプの会計伝票タイプへの割当
主要テーブル
| テーブル | 内容 |
|---|---|
| TVFK | 請求伝票タイプマスタ |
| VBRK | 請求伝票ヘッダ |
| VBRP | 請求伝票明細 |
| VBFA | 伝票フロー(納入→請求の連鎖) |
S/4HANAでの変更点
- 請求伝票タイプの基本概念とタイプコードはそのまま維持
- Universal Journal(ACDOCA)化により、請求転記時の会計伝票がリアルタイム反映
- Fiori「請求伝票の管理」「一括請求」アプリで従来のVF01/VF04機能を代替
- Convergent Invoicing(統合請求)との連携でサブスクリプション・リカーリング請求のユースケースが拡充
現場でよくある誤解
- 「F2を使えばすべての請求が作れる」と思いがちだが、返品や貸方メモには専用タイプが必要
- プロフォーマ請求(F5/F8)は会計転記されないため、売上計上のつもりで作ると月次締めで残高不一致
- 請求伝票タイプと会計伝票タイプ(RV)を混同しがちだが別物。SD側の制御キーとFI側の制御キー
- 番号範囲を分けないと、貸方メモと通常請求が同じ番号体系で採番されて経理側で混乱
設計の勘所
請求伝票タイプを設計するときの観点です。
- 会計転記が必要な請求か? → 不要ならプロフォーマ系(F5/F8)
- 参照元は受注か納入か? → サービス業なら受注、物販なら納入
- 番号範囲を別管理したいか? → 業務統制上は種類別に分けるのが推奨
- 請求書PDFのレイアウトを分けるか? → 出力タイプと組み合わせて制御
標準タイプ(F2・G2・L2)をベースにZコピーして自社用にカスタマイズするのが安全な進め方です。標準タイプを直接編集するとパッチ適用時に上書きされるリスクがあります。
トラブル事例
- 貸方メモでF2を使ってしまい、会計側で二重売上計上になった
- プロフォーマ請求(F8)を通常請求と勘違いして顧客に送付し、入金管理が混乱
- 請求伝票タイプと番号範囲の紐付け漏れで「番号範囲が見つかりません」エラー
- 会社間請求(IV)の設定漏れで決算時に会社間残高が一致しない
FAQ
Q. F2とF1の違いは何ですか?
F2は納入伝票を参照して作成する「納入関連請求」、F1は受注を直接参照する「受注関連請求」です。物販はF2、サービス業や受注即請求の業態ではF1を使います。
Q. 貸方メモ(G2)と返品請求(RE)の違いは?
G2は受注(貸方メモ依頼)を参照して作成する返金伝票で、物の動きは伴いません。REは返品納入を参照して作成するため、実際の返品在庫受入と連動します。「お金だけ戻す」ならG2、「物も戻ってくる」ならREです。
Q. プロフォーマ請求は何に使いますか?
主に輸出通関時の事前請求書として使います。通関書類として必要ですが、会計上は正式な売上ではないため、会計転記されないタイプ(F5/F8)で作成します。実際の売上計上は通常のF2で別途行います。
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