入門・学習

納入伝票(出荷伝票)とは|SAP SDで出荷業務を駆動する伝票を実務目線で解説

目次

一言で

納入伝票(出荷伝票)とは、SAPにおける受注から請求までの間で出荷業務を駆動するSDの中核伝票です。ピッキング・梱包・出庫転記・輸送指示など、「モノを実際に動かす作業」はすべてこの伝票を起点に実行されます。


なぜ納入伝票が必要か

受注伝票(Sales Order)だけでは「いつ・何を・どれだけ出荷したか」を記録できません。納入伝票は、受注と請求の間で物理的な出荷作業と会計的な在庫減の橋渡しをする伝票として機能します。

納入伝票がないと、次のことができません。

  • 受注の一部だけを先行出荷する分割納入ができない
  • ピッキング・梱包の進捗ステータスを管理できない
  • 出庫転記(在庫減・売上原価計上)の起点がない
  • 請求伝票(Billing)の発行トリガを持てない

逆に納入伝票を介することで、「受注1件 → 納入3回 → 請求1回」や「受注3件 → 納入1回(統合出荷)→ 請求1回」といった柔軟な運用が可能になります。


受注・納入・請求の関係

flowchart LR
  SO[受注伝票
Sales Order] --> DL[納入伝票
Delivery] DL --> PK[ピッキング
LT03] PK --> PG[梱包
VL02N] PG --> GI[出庫転記
PGI] GI --> BL[請求伝票
Billing VF01] style DL fill:#f0f6ff,stroke:#0053F4,stroke-width:2px,color:#0053F4
凡例 処理フロー 英数字コード = Tコード(SAPの操作コマンド) この記事のテーマ

納入伝票は受注伝票から作成され(VL01N/VL10A)、出庫転記(PGI:Post Goods Issue)で在庫と会計が動き、請求伝票の発行トリガになります。


具体例:受注→納入の流れ

架空の食品メーカーA社で、得意先から100ケースの受注があった場合の流れです。

ステップ伝票数量Tコード
受注登録受注10000001100ケースVA01
納入作成(1回目)納入8000000160ケースVL01N
出庫転記同上60ケースVL02N
納入作成(2回目)納入8000000240ケースVL01N
出庫転記同上40ケースVL02N
請求請求90000001100ケースVF01

このように納入伝票を分割することで「分割納入」を実現します。逆に複数の受注を1つの納入にまとめて「統合出荷」することもできます。


技術的な位置づけ

  • SDモジュールの出荷業務の中核伝票。ヘッダは出荷ポイント単位で管理される
  • 納入伝票タイプ(LF:標準出荷、LR:返品納入、NL:プラント間移送など)で処理ロジックが分岐
  • 出庫転記(PGI)で在庫(MARD/MSEG)と会計伝票(BKPF/BSEG)が同時に更新される
  • 請求関連性(Billing Relevance)の設定により、納入起点請求か受注起点請求かが決まる

カスタマイズパス(IMG:Implementation Guide、SAPの設定ガイド)

SPRO > ロジスティクス実行 > 出荷 > 出荷伝票 > 納入伝票タイプの定義
SPRO > ロジスティクス実行 > 出荷 > 出荷伝票 > 明細カテゴリの定義
SPRO > ロジスティクス実行 > 出荷 > 基本出荷機能 > 出荷ポイントおよび入荷ポイントの決定

主要テーブル

テーブル内容
LIKP納入伝票ヘッダ
LIPS納入伝票明細
VBFA伝票フロー(受注→納入→請求の連鎖)
VBUK / VBUP伝票ステータス(ヘッダ/明細)

S/4HANAでの変更点

  • 納入伝票の基本概念とテーブル構造は維持
  • aATP(Advanced Available-to-Promise)で納期約束と納入計画が高度化
  • Fiori「アウトバウンド納入の管理」アプリで作業進捗をリアルタイム可視化
  • EWM(Extended Warehouse Management:拡張倉庫管理)との密連携で、倉庫タスク(WT)を自動生成する運用が標準化

現場でよくある誤解

  • 「納入伝票=請求書」と混同されるが、別物。納入は物の動き、請求はお金の動きを表す
  • 出庫転記(PGI)を実行するまでは在庫は減らない。納入伝票作成だけでは在庫影響ゼロ
  • 納入伝票を削除しても、出庫転記済みの在庫は戻らない(先にPGI反転が必要)
  • 「納入伝票タイプ=出荷伝票タイプ」は同じ意味。テキストが揺れているだけ

設計の勘所

納入伝票の運用を設計するときの観点です。

  • 分割納入を許すか? → 得意先別に制御可能(得意先マスタの分割配送フラグ)
  • 統合出荷を使うか? → 納入作成ルート(VL10A/VL10C)のバックグラウンドジョブで実現
  • ピッキング・梱包をSAPで管理するか? → WM/EWMなし運用ならLT03を省略可
  • 請求トリガを納入起点にするか受注起点にするか? → 請求関連性で設定

「受注1件=納入1件=請求1件」が最もシンプルですが、分割配送や統合請求が必要な業界(食品・医薬・アパレル)では柔軟設計が必須です。


トラブル事例

  • 出庫転記したのに在庫がマイナスになる → 在庫不足チェック設定漏れ
  • 納入作成時に「出荷ポイントが決定できません」エラー → 得意先出荷条件or品目積込グループ未設定
  • 統合出荷で意図せず異なる得意先の受注がまとまる → 統合条件(仕向地・配送日)設計ミス
  • PGI後に納入伝票を変更できず、数量修正不可になる → PGI前に変更するか、反転してやり直し

FAQ

Q. 納入伝票と出荷伝票は違うものですか?
同じものです。日本語訳の揺れで「納入伝票」「出荷伝票」「デリバリ伝票」と複数の呼び方がありますが、すべて英語のDelivery Documentを指しています。SAP公式日本語訳では「納入伝票」が標準です。

Q. 受注なしで納入伝票を作れますか?
基本的には受注ベースで作成しますが、返品納入(LR)や特殊なケースでは受注なしでも作成可能な伝票タイプがあります。ただし業務統制上は受注起点が原則です。

Q. 出庫転記(PGI)を取り消すにはどうすればいいですか?
VL09(出庫転記の取消)トランザクションで取り消せます。取り消すと在庫・会計伝票が逆仕訳され、納入伝票は出庫前のステータスに戻ります。請求後だと取消できないので注意してください。


関連する用語

関連用語

本用語と一緒に押さえておくと理解が深まる用語をまとめます。

← 流通チャネルとは|SAP SDで販売ルートを区別する単位を実務目線で解説 請求伝票タイプとは|SAP SDで請求書の種類を制御する仕組みを実務目線で解説 →
← 記事一覧に戻る