一言で
伝票タイプとは、SAPにおける伝票の種類を分類する2桁の識別コードです。会計伝票・発注伝票・販売オーダーなど、それぞれの業務領域で独自の伝票タイプ体系を持ちます。
なぜ必要か
SAPでは同じ「会計伝票」といっても、仕入先請求書・得意先入金・振替仕訳・決算整理仕訳など、業務的な意味はまったく異なります。これらをすべて同じ採番範囲・同じ入力チェック・同じ承認ルートで扱うと、監査証跡の追跡や月次締めの運用が破綻します。
伝票タイプは採番範囲・許可される勘定科目・必須項目・承認フローを一括して制御する入口のキーとして機能します。伝票タイプが無ければ、どの伝票がどの業務で発生したかを事後的に区別できず、監査対応も勘定分析も困難になります。
関係図:伝票タイプと採番範囲の紐付き
flowchart LR
subgraph input["入力"]
A["取引発生
FB50/ME21N等"]
end
subgraph doc["伝票タイプ制御"]
B["伝票タイプ
例:SA/KR/NB"]
C["採番範囲
Number Range"]
D["許可勘定
/必須項目"]
end
subgraph result["結果"]
E["伝票番号
採番"]
F["会計伝票
登録"]
end
A --> B
B --> C
B --> D
C --> E
D --> F
E --> F
style B fill:#f0f6ff,stroke:#0053F4,stroke-width:2px,color:#0053F4業務領域別の代表例
FI(Financial Accounting:財務会計)会計伝票
- SA:G/L(General Ledger:総勘定元帳)勘定伝票
- KR:仕入先請求書
- KZ:仕入先支払
- DR:得意先請求書
- DZ:得意先入金
MM(Materials Management:在庫購買管理)発注
- NB:標準発注
- UB:プラント間移送発注(STO:Stock Transport Order)
- FO:枠発注
- RV:返品発注
SD(Sales and Distribution:販売管理)販売オーダー
- OR:標準オーダー
- RE:返品
- FD:無償提供
- CS:現金販売
具体例:商社B社のケース
架空の専門商社B社では、FIの伝票タイプを次のように運用しています。
- 通常の仕入請求書:KR(採番範囲51:5100000000〜)
- 輸入取引の仕入請求書:ZI(自社カスタム、採番範囲52)
- 決算整理仕訳:SA(採番範囲01)
- 月次償却仕訳:AB(自動転記専用)
輸入取引を通常のKRと分離することで、輸入消費税の集計・為替差損益の分析が伝票タイプ単位で簡単に行えるようになっています。
技術的な位置づけ
- 伝票の採番範囲を決める
- 仕訳パターンの制御(許可される勘定科目や顧客タイプ)
- 承認フローの振り分けキー
- ワークフロー起動の条件
- 設定テーブルは T003(FI伝票タイプ本体)、T003T(テキスト)。MMは T161、SDは TVAK に別体系で格納
- カスタマイジングは OBA7(FI)で実施
S/4HANAでの変更点
S/4HANAではFI伝票の格納先がBKPF/BSEGからUniversal Journal(ACDOCA)に統合され、管理会計のCO(Controlling:管理会計)伝票もFI伝票と同じテーブルで扱われるようになりました。これに伴い、従来CO専用だった取引(二次原価要素の振替など)も、FI伝票タイプで制御されるケースが増えています。伝票タイプの設計段階で、管理会計との境界線を明確にしておくことが以前より重要です。
現場でよくある誤解
- 「伝票タイプ=業務名」ではない。システム制御キー
- 伝票タイプは業務領域ごとに独立(FIのSAとMMのNBは別世界)
- 採番範囲と伝票タイプを1:1にすると、柔軟性が下がる場合あり
実務での決め方
- 標準タイプを優先的に使う
- カスタムタイプは「標準の設定では表現できない業務要件」がある場合のみ
- 命名ルール:Z始まりやY始まりで自社カスタムと識別
トラブル事例
- 伝票タイプ別採番の連番崩壊(並行運用で欠番発生)
- カスタム伝票タイプの設定漏れで承認フローが回らない
- 返品と通常を同じ伝票タイプで扱い、集計が混乱
FAQ
Q1. 伝票タイプと採番範囲は必ず1:1ですか? いいえ。複数の伝票タイプが同じ採番範囲を共有することも、1つの伝票タイプを1つの採番範囲に専用割り当てすることも可能です。監査要件・分析要件に応じて設計します。
Q2. FIとMMの伝票タイプは連動しますか? MIGOで入庫すると、MM側ではWE(入庫伝票)、FI側では自動的にWE相当のFI伝票タイプで会計伝票が登録されます。連動はしていますが、別体系のコードとして管理されます。
Q3. 既存の伝票タイプのテキスト(名称)は変更できますか? テキストは変更可能ですが、本番運用後の変更は監査証跡への影響があるため、変更履歴を残す運用ルールを定めてから実施してください。
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