一言で
自由品目とは、SAPにおける「10個買ったら1個おまけ」のような無償提供を自動で受注伝票に追加する仕組みです。販促キャンペーンや数量プロモーションを、毎回手動で入力することなくマスタ設定だけで実現できます。
なぜ自由品目が必要か
販促施策で「10個購入で1個無料」を手動運用すると、営業担当が無料明細を入力し忘れたり、逆に多く入れてしまったりして売上・原価の誤計上が発生します。
自由品目機能がないと、次のことができません。
- 受注時に自動で「おまけ明細」を追加できない
- おまけ分の原価を正しく処理できない(値引として会計処理するか、無償出荷として処理するかの区別)
- キャンペーン期間の自動適用(開始日/終了日)ができない
- 品目×数量別のルール(10個で1個、20個で3個など)を一元管理できない
Free Goodsの2つの方式
flowchart LR ORD[受注登録
VA01] --> CHK[Free Goodsマスタ
VBN1] CHK --> INC[Inclusive方式
購入数に含む] CHK --> EXC[Exclusive方式
購入数と別明細] INC --> LINE1[明細1: 商品X
10個 うち1個無償] EXC --> LINE2[明細1: 商品X
10個 有償] EXC --> LINE3[明細2: 商品X
1個 無償] style CHK fill:#f0f6ff,stroke:#0053F4,stroke-width:2px,color:#0053F4
Inclusive方式は「10個の中の1個が無償」、Exclusive方式は「10個有償 + 1個無償 = 合計11個出荷」という違いがあります。
具体例:製造業A社の場合
架空の製造業A社が「ビールケース6本買ったら1本おまけ」キャンペーンをするとします。
| 設定項目 | 内容 |
|---|---|
| 基準品目 | 品目コード100(ビール6本ケース) |
| 必要数量 | 6個 |
| 無償数量 | 1個 |
| 無償品目 | 品目コード100(同一品目) |
| 方式 | Exclusive |
| 有効期間 | 2026/4/1〜2026/6/30 |
得意先が6ケース注文すると、受注伝票に自動で「有償6ケース + 無償1ケース」の2明細が起票されます。無償明細は価格設定で100%値引されるか、価格タイプで無償と判定されて金額ゼロで処理されます。
技術的な位置づけ
- SD(Sales and Distribution:販売管理)の価格設定機能の一部として実装
- 条件技法(Condition Technique)を利用し、アクセスシーケンスで品目・得意先を検索
- Free Goodsは「品目カテゴリ」の仕組みと連動し、無償明細は専用の品目カテゴリ(TANN等)で処理される
- ディスカウント扱いのInclusive、数量追加のExclusiveで会計処理が異なる
カスタマイズパス(IMG:Implementation Guide、SAPの設定ガイド)
SPRO > 販売管理 > 基本機能 > 自由品目 > 条件技法の保守
SPRO > 販売管理 > 基本機能 > 自由品目 > 自由品目決定手順
SPRO > 販売管理 > 販売 > 販売伝票 > 販売伝票項目 > 品目カテゴリの定義
- TANN(無償明細用の品目カテゴリ)
主要Tコードとテーブル
| 種類 | 名称 | 内容 |
|---|---|---|
| Tコード | VBN1 / VBN2 / VBN3 | Free Goods条件の登録/変更/照会 |
| テーブル | KONA / KONH / KONP | 条件マスタヘッダ/明細 |
| テーブル | KOTN### | Free Goods条件テーブル |
S/4HANAでの変更点
- 自由品目の基本機能は従来通り維持
- SAP Fiori App「販売促進の管理」で条件を直感的に保守可能
- S/4HANA Cloud版では一部制約があり、特殊な業界要件(階層的なおまけ設計など)は拡張が必要
- HANAのインメモリにより、受注登録時のFree Goods判定が高速化
現場でよくある誤解
- 「自由品目=品目マスタの属性」ではない。自由品目は「販促条件マスタ」のことで、品目マスタ自体を変更する機能ではない
- Inclusive/Exclusiveの選択は税計算や会計仕訳に影響する重要な判断
- 無償明細は通常の受注明細と同じく在庫引当・出荷・会計転記が行われる(ただの表示ではない)
- キャンペーン期間の自動終了を忘れると、ずっとおまけが付き続けて利益を圧迫
実務での決め方
Free Goodsの設計では次の観点で切り分けます。
- Inclusive(値引扱い)とExclusive(追加無償)どちらが経営管理・税務上扱いやすいか?
- 同一品目のおまけか、別品目(販促サンプル)のおまけか?
- 累積条件(「100個買うたびに10個」を繰り返すか、「100個買ったら1回だけ10個」か)
- 有効期間・販売組織・流通チャネル単位でどう絞り込むか?
Inclusiveは請求額が変わらず販売数量だけ増やす形なので会計処理はシンプルですが、顧客には「値引」としてではなく「おまけ」として見せにくい場合があります。顧客向けの訴求文言と会計処理の両方を設計段階で確認するのが重要です。
トラブル事例
- Exclusive方式で品目カテゴリTANNの会計決定を設定し忘れ、無償明細の転記でエラー
- 有効期間の終了日を入れ忘れて、半年以上おまけが付き続けて原価回収不能
- 無償明細の原価が費用計上されず、COの損益分析で実態がつかめない
- 数量別スケールの設定ミスで、10個で1個のはずが100個で1個になり販促効果ゼロ
FAQ
Q. Free Goodsと通常の100%値引(K004等)の違いは?
100%値引は金額をゼロにするだけで、数量は変わりません。Free Goodsは数量を追加する(Exclusive)か、数量内訳として無償数量を分ける(Inclusive)仕組みで、物流上の実数が変わる点が決定的に異なります。
Q. 異なる品目を無償提供できますか?(「Aを10個買ったらBを1個おまけ」)
できます。Exclusive方式では無償品目に別の品目コードを指定可能です。販促サンプルや関連商品プロモーションでよく使われる設計です。
Q. 自由品目の在庫引当はどうなりますか?
通常の受注明細と同じく在庫引当・出荷が行われます。無償だから在庫が減らない、ということはありません。キャンペーン設計時は無償分の在庫確保も含めて需給計画を立てる必要があります。
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