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品目カテゴリ(SD明細)とは|SAP販売伝票の明細挙動を決める要を実務目線で解説

目次

一言で

品目カテゴリ(SD明細)とは、SAPの販売伝票明細でその1行がどう振る舞うか(課金・納入・在庫引当・BOM展開)を決める3〜4桁の制御コードです。同じ販売伝票の中でも、行ごとに異なる性格を与えるための中核オブジェクトです。


なぜ品目カテゴリが必要か

販売伝票には標準品・直送品・預託品・BOM親・テキスト行・返品など、多様な性格の行が混ざります。品目カテゴリがなければ、それらを1つのロジックで処理することはできません。品目カテゴリは、明細単位の挙動を束ねる「設計図」として機能します。

これがないと、次のことができません。

  • 課金可否(請求対象かどうか)を行単位で切り替えられない
  • 納入(出荷伝票生成)対象行とそうでない行を区別できない
  • BOM親品目と子品目で別の扱いをできない
  • 直送(購買依頼自動生成)や預託出庫を制御できない

逆に品目カテゴリを適切に設計すれば、標準受注1本の中に「通常販売」「直送」「無償サンプル」「BOM構成品目」を共存させることができます。


決定ロジック

flowchart LR
  ST[販売伝票タイプ
OR] --> DEC{明細カテゴリ
決定} IT[品目タイプ
NORM] --> DEC UGV[用途/HLItemCat
空欄/上位明細] --> DEC DEC --> IC[品目カテゴリ
TAN 標準] DEC -.-> IC2[TAS 直送] DEC -.-> IC3[KEN 預託出庫] DEC -.-> IC4[TAP BOM親] IC --> SL[スケジュール明細カテゴリ] style IC fill:#f0f6ff,stroke:#0053F4,stroke-width:2px,color:#0053F4
凡例 決定の流れ -.-> 条件で分岐する候補 この記事のテーマ

品目カテゴリは「販売伝票タイプ+品目マスタの品目タイプ+用途(Usage)+上位明細カテゴリ(HLItemCategory)」の4要素の組み合わせから自動決定されます。


代表的な品目カテゴリ

コード名称性格
TANStandard Item在庫から引当→出荷→請求。標準販売の基本
TASThird-party Item直送。購買依頼を自動生成し、入庫せず請求
KENConsignment Issue顧客預託在庫からの出庫(預託出庫)
KBNConsignment Fill-up顧客預託への補充納入(非課金)
TAPBOM Parent ItemBOM親品目。それ自体は課金せず、子が実販売
TANNFree Goods Item無償品(サンプル・おまけ)
RENReturns Item返品処理用

具体例:混載受注の場合

ある得意先に「製品A(通常販売)+製品B(直送)+製品C(無償サンプル)」を同一受注で出す場合、同じ受注伝票タイプORの中で次のように行ごとに品目カテゴリが変わります。

明細品目品目カテゴリ挙動
10製品ATAN在庫引当→出荷→請求
20製品BTAS購買依頼自動生成→直送→請求
30製品CTANN無償。課金せずに出荷のみ

同じ受注の中で、行単位に全く異なる業務プロセスを走らせられるのが品目カテゴリの真価です。


技術的な位置づけ

  • SD(Sales and Distribution:販売管理)の販売伝票明細テーブルVBAPにカテゴリキーが格納される
  • 課金フラグ、納入フラグ、価格計算フラグ、スケジュール行有無など、20以上の制御フラグの集合体
  • スケジュール明細カテゴリの親となり、ATP実行・所要量転送・購買依頼生成を間接的に制御

カスタマイズパス(IMG)

SPRO > 販売管理 > 販売 > 販売伝票 > 販売伝票明細 > 明細カテゴリの定義
SPRO > 販売管理 > 販売 > 販売伝票 > 販売伝票明細 > 明細カテゴリの割当
トランザクション: VOV7 (定義) / VOV4 (割当)

主要テーブル

テーブル内容
TVAP品目カテゴリ(SD明細)マスタ
TVEPZ明細カテゴリ→スケジュール明細カテゴリ割当
VBAP販売伝票明細

S/4HANAでの変更点

  • 品目カテゴリの概念自体は従来通り維持
  • S/4HANAでは「Sales Order Fulfillment Monitor」などFiori Appで品目カテゴリ別の状況可視化が強化
  • 直送シナリオ(TAS)はaATPと連動し、購買リードタイムを考慮した納期回答が標準化

現場でよくある誤解

  • 「品目カテゴリ=品目タイプ」と混同しがちだが、品目タイプ(NORM, HAWA等)は品目マスタ側、品目カテゴリはSD伝票側の概念
  • 1つの品目に対して常に同じ品目カテゴリが決まるわけではない。受注タイプや上位明細で変わる
  • カスタムカテゴリを作りすぎるとメンテが地獄化する
  • BOM展開時、親(TAP)と子(TAN/TAE)のどちらに課金属性を持たせるかを間違えると請求額が倍になる事故が起きる

実務での決め方

品目カテゴリ設計では次の観点で整理します。

  • 請求対象か? → 無償ならTANN、有償ならTAN系
  • 在庫を動かすか? → 直送ならTAS、預託ならKEN/KBN
  • 納入が必要か? → サービス品ならTADなど納入なし系
  • BOMを展開するか? → 親と子で別カテゴリを割り当てる

まずは標準のTAN/TAS/KEN/TAPで設計し、独自カテゴリ作成は最後の手段にするのが鉄則です。


トラブル事例

  • 直送品にTANを割り当ててしまい、実在しない在庫から引当→ATPエラー頻発
  • BOM親(TAP)に課金フラグが付いていて、親と子の両方が請求されて二重課金
  • 無償サンプル用にTANNを使うべきところをTANで出して、顧客に請求書が届いてクレーム
  • 預託補充(KBN)と預託出庫(KEN)の区別を誤り、在庫が動いても売上計上されない事象

FAQ

Q. 品目カテゴリと品目タイプの違いは?
品目タイプ(NORM, HAWA, DIENなど)は品目マスタ側の属性で「その品目がどんなモノか」を表します。品目カテゴリはSD伝票側の属性で「その行がどう振る舞うか」を表します。両者は決定ロジックで結ばれているだけで別概念です。

Q. 同じ品目を通常販売と直送の両方で使えますか?
使えます。標準受注では品目カテゴリ決定ルールでTANに、直送受注タイプ(OR→TAS割当)ではTASに自動で切り替わります。

Q. 品目カテゴリは手動変更できますか?
VOV4の設定で「手動許可カテゴリ」を指定しておけば、受注登録時に一覧から切り替えられます。ただし業務ルールを崩すリスクがあるため、通常は自動決定のみとします。


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