一言で
品目タイプとは、SAPにおける品目が持つ性格(原材料か製品か購入品かなど)を決める最上位の分類コードです。品目タイプによって、数量管理の有無、金額管理の有無、画面表示項目などが決まります。
なぜ必要か
SAPの品目マスタは非常に多くの項目を持つため、すべての品目で同じ画面・同じ項目を扱うと現場は破綻します。たとえば原材料には「購買情報」は必要ですが「販売情報」は不要です。逆に製品には「販売情報」「原価計算」が必要ですが、外部から購入することは通常ありません。
こうした業務上の違いをシステム側で吸収するために、品目タイプが「どのビューを持てるか」「どの項目が必須か」「数量・金額管理をするか」を一括制御しています。言い換えると、品目タイプは品目マスタの項目制御と会計連携の土台です。
これを曖昧に設計すると、原価計算の対象外にすべき品目が原価ロールアップに混入したり、在庫管理不要の消耗品に棚卸の負荷がかかったりと、運用全体に影響が波及します。
代表例と比較
flowchart LR
subgraph buy["購入される品目"]
ROH["ROH
原材料"]
HAWA["HAWA
商品"]
NLAG["NLAG
非在庫品"]
end
subgraph make["社内で作る品目"]
HALB["HALB
半製品"]
FERT["★ FERT
製品"]
end
subgraph other["その他"]
DIEN["DIEN
サービス"]
UNBW["UNBW
非評価品"]
end
ROH --> HALB --> FERT
HAWA -.-> FERT
style FERT fill:#f0f6ff,color:#0053F4,stroke:#0053F4,stroke-width:2px標準の品目タイプ
- ROH(Rohstoff:原材料/英:Raw Material)
- HALB(Halbfabrikat:半製品/英:Semi-finished)
- FERT(Fertigerzeugnis:完成品/英:Finished Product)
- HAWA(Handelsware:商品/英:Trading Goods):仕入れて販売する品
- DIEN(Dienstleistung:サービス/英:Service):数量・金額管理なし
- NLAG(Nichtlagermaterial:非在庫品/英:Non-stock):事務用品など都度購入
- UNBW(Nichtbewertetes Material:非評価品/英:Non-valuated):数量管理のみで金額管理なし
実務ではこの7つで大半をカバーできます。
具体例(架空の食品メーカー)
架空の食品メーカー「A社」を例に、品目タイプの設計イメージを示します。
- 小麦粉・砂糖などの原料 → ROH(購買ビューあり、販売ビューなし、移動平均法で評価)
- 製造ラインで作る生地・ソースなど → HALB(原価計算対象、製造指図で生成)
- 完成品のパン・菓子 → FERT(販売ビューあり、標準原価で評価)
- 商社から仕入れて店頭で転売するギフト品 → HAWA
- 社内で使う梱包資材のうち即消費するもの → NLAG(在庫を持たず直接費用化)
- コンサルティング・工事役務 → DIEN
このように「同じ小麦粉でも評価方法・ビュー構成が違うべき」という判断はすべて品目タイプで吸収します。
品目タイプで決まること
- 数量管理の有無
- 金額管理の有無
- 勘定決定のグループ
- 採番タイプ(自動/外部)
- 必須入力項目(ビュー単位)
- 変更履歴の要否
技術的な位置づけ
- カスタマイズテーブル:T134(品目タイプ定義)、T134M(品目タイプ×評価クラス対応)
- 品目マスタ(MARA)の項目 MTART に格納
- トランザクション:OMS2(品目タイプのカスタマイズ)、MMAM(品目タイプ変更)
- 品目タイプは「ビューの表示可否」「フィールド状況」「数量/金額更新フラグ(MARC/MBEW)」を一括で制御する設計上の要です
S/4HANAでの変更点
S/4HANA自体では品目タイプの基本概念に大きな変更はありませんが、以下の点が変わっています。
- 品目コードの桁数が18桁から 40桁 へ拡張(MATN1ではなくMATN1_EXTを使用)
- Business Partner統合の影響で一部の評価クラス連携が再設計
- Fiori「Manage Product Master」からの登録では一部の旧画面項目が統合
- クラシカルなMM01の挙動は残っているが、Clean Core観点ではFioriアプリ経由が推奨
品目タイプのカスタマイズを増やすとアップグレード時の差分吸収コストが跳ね上がるため、標準流用を強く推奨します。
現場でよくある誤解
- 「品目タイプ=品目グループ」ではない。品目タイプはシステム的な性格、品目グループは分類的なグルーピング
- 品目タイプは品目登録時に決めた後、変更が非常に困難(MMAMトランザクションで可能だが制約多い)
- 新規品目タイプをコピーして作る場合、設定項目の漏れに注意
実務での決め方
- 業務上のフロー(購入→製造→販売)に合わせてマッピング
- 特殊な運用がない限り標準タイプを流用する(カスタムタイプを増やさない)
- Clean Core戦略(詳細はClean Core戦略)の観点でも標準維持が推奨
トラブル事例
- HAWAで受発注運用していたが製造原価計算が必要になり、HALBへの変更に苦労
- サービス品目に誤ってROHを割り当て、在庫数量管理の制約で困る
- 非在庫品(NLAG)に在庫数量を持たせる運用をしてしまい整合性破綻
FAQ
Q. 品目タイプと品目グループの違いは? A. 品目タイプはシステム的な性格(数量/金額管理やビュー構成)を決める制御キーで、品目グループは業務上の分類軸です。品目タイプは数十個程度に限定されるのに対し、品目グループは数百〜数千単位で定義されます。
Q. 品目タイプは後から変更できますか? A. MMAMトランザクションで変更可能ですが、評価クラスや採番範囲が異なる品目タイプ間の変更は制約が多く、在庫ゼロ・未処理の伝票なしなどの条件を満たす必要があります。実質「作り直し」に近い作業です。
Q. カスタム品目タイプを作るべきですか? A. 原則として標準タイプ(ROH/HALB/FERT等)を流用するのが推奨です。カスタム品目タイプを増やすと、アップグレードやClean Core戦略の足かせになります。どうしても必要な場合は、標準タイプをコピーして最小限の差分だけ変える方針が安全です。
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