一言で
出力タイプとは、SAPにおける受注確認書・納品書・請求書などの帳票やEDI・メール送信を制御する設定キーです。「どの伝票から」「どの宛先に」「どの形式で」「いつ」出力するかを定義します。
なぜ出力タイプが必要か
伝票を作成しただけでは、顧客に書類が届きません。出力タイプは、伝票と外部への通知・帳票をつなぐブリッジとして機能します。
出力タイプがないと、次のことができません。
- 受注登録時に自動で注文請書PDFを生成できない
- 納入伝票から納品書・ピッキングリストを印刷できない
- 請求伝票から請求書PDFを顧客にメール送信できない
- EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)で取引先と自動連携できない
逆に出力タイプを適切に設計すれば、伝票作成と同時に帳票・メール・EDI・FAX・IDocがトリガされる完全自動運用が実現できます。
出力タイプの決定の仕組み
flowchart LR DOC[伝票
受注/納入/請求] --> OD[出力決定手順] OD --> OT1[出力タイプ
BA00 注文請書] OD --> OT2[出力タイプ
LD00 納品書] OD --> OT3[出力タイプ
RD00 請求書] OT3 --> MD[出力媒体
印刷/メール/EDI/FAX] OT3 --> FM[フォーム
SmartForms/Adobe] style OT3 fill:#f0f6ff,stroke:#0053F4,stroke-width:2px,color:#0053F4
伝票作成時に「出力決定手順」が評価され、条件に合致する出力タイプが自動選択されます。選ばれた出力タイプは、出力媒体(印刷・メール・EDI・FAX・IDoc)と帳票フォームを指定して実際の出力処理を行います。
標準的な出力タイプ
| コード | 名称 | 対象伝票 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| BA00 | 注文請書 | 受注 | 顧客への受注確認 |
| LD00 | 納品書 | 納入 | 出荷時の同梱伝票 |
| RD00 | 請求書 | 請求 | 顧客への請求書送付 |
| メール通知 | 各種 | ステータス変更通知 | |
| ORDRSP | EDI注文応答 | 受注 | 取引先との電子データ交換 |
| INVOIC | EDI請求 | 請求 | EDIによる電子請求 |
ZコピーしてZBA00・ZRD00などの自社用出力タイプを作るのが一般的です。
技術的な位置づけ
- SD/MM/FI共通で使われる「NAST(メッセージ制御)」という仕組みの一部
- 伝票タイプごとに「出力決定手順」を割り当て、手順内で条件テーブルを評価して出力タイプを決定
- 出力タイプには「送信媒体(Transmission Medium)」「出力時点(Dispatch Time)」「フォーム」「処理プログラム」を設定
- 出力時点は「即時出力」「バックグラウンドで後出力」「手動のみ」などを選択可能
カスタマイズパス(IMG:Implementation Guide、SAPの設定ガイド)
SPRO > 販売管理 > 基本機能 > 出力制御 > 出力決定 > 条件テクニックによる出力決定 > 販売伝票の出力決定
SPRO > 販売管理 > 基本機能 > 出力制御 > 出力決定 > 条件テクニックによる出力決定 > 請求伝票の出力決定
SPRO > ロジスティクス実行 > 出荷 > 基本出荷機能 > 出力制御 > 出力決定
主要テーブル
| テーブル | 内容 |
|---|---|
| NAST | メッセージステータス(出力実行履歴) |
| TNAPR | 出力処理プログラム割当 |
| T685 | 条件タイプマスタ(出力タイプも含む) |
主要Tコードは NACE(出力決定カスタマイズの統合エントリポイント)です。
S/4HANAでの変更点
- 従来のNASTベースのメッセージ制御に加え、新フレームワーク「BRF+(Business Rule Framework plus)」を使った出力管理が導入された
- Output Management via BRF+では、Adobe Forms・メール本文・チャネル(印刷/メール/EDI/XML)をより柔軟に制御可能
- 既存カスタマでは従来NAST方式と新BRF+方式の併用も可能だが、新規実装ではBRF+が推奨
- Fiori「出力管理」アプリで出力状況のモニタリングと再送が標準化
現場でよくある誤解
- 「出力タイプ=帳票フォーム」と思いがちだが、フォームは出力タイプに紐付く1属性にすぎない
- 出力決定手順を設計せずに出力タイプだけ作っても、自動では呼び出されない
- メール送信は出力タイプだけでなく、SAPconnect(SCOT)のメール接続設定も必要
- EDI出力はIDocの設定(パートナプロファイル・ポート)まで含めて初めて動く
設計の勘所
出力タイプを設計するときの観点です。
- 出力媒体は何か? → 印刷・メール・EDI・FAX・XMLから選択
- 出力時点は即時か後追いか? → 即時=伝票保存時、後追い=バックグラウンドジョブRSNAST00
- フォームは標準で足りるか? → 通常はZコピーしてABAPer/Formコンサルが調整
- 再送ロジックは必要か? → 出力失敗時の自動再送やエラー通知を設計
「伝票タイプ × 出力タイプ × 出力媒体 × フォーム」の組み合わせを整理した出力マトリクスを設計初期に作るのが鉄則です。これがないと後工程で混乱します。
トラブル事例
- 出力決定手順の条件未設定で、受注登録時に注文請書が全く出力されない
- メール送信設定(SCOT)未完了で、出力ステータスは成功だが実際にメールが届かない
- フォームの翻訳不足で、海外子会社の請求書が英語表記にならない
- NASTレコードが肥大化してパフォーマンス劣化 → 定期アーカイブ運用が必要
- 新BRF+と旧NASTを混在させて出力条件がダブルヒット
FAQ
Q. 出力タイプと伝票タイプは何が違いますか?
伝票タイプは「伝票そのものの種類(F2通常請求・G2貸方メモなど)」、出力タイプは「その伝票から出力する帳票や通知の種類(請求書PDF・EDIなど)」です。1つの伝票タイプから複数の出力タイプが呼ばれるのが普通です。
Q. 帳票レイアウトを変えたいときはどこを修正しますか?
出力タイプに紐付くフォーム(SmartForms・SAPScript・Adobe Forms)を修正します。通常はABAPerまたはフォームコンサルの作業範囲です。出力タイプ側の設定変更だけでは見た目は変わりません。
Q. 出力が失敗したときはどう確認しますか?
伝票メニューの「出力確認」または出力履歴テーブルNASTを確認します。出力ステータスが「赤(エラー)」なら詳細メッセージを確認し、必要に応じて再処理(RSNAST00)を実行してください。
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