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価格設定手順とは|SAP SDの価格決定ロジックを実務目線で解説

目次

一言で

価格設定手順とは、SAPにおける価格・割引・税・運賃などの条件タイプを並べて計算順序を定義する「価格計算のレシピ」です。受注や請求時に、どの条件をどの順番で積み上げて最終金額を出すかを制御します。


なぜ価格設定手順が必要か

販売価格は「基本価格だけ」で決まることはほぼなく、得意先別割引・品目別割引・数量割引・運賃・税などが複雑に絡みます。これらを決まった順序で正確に計算するためのテンプレートが価格設定手順です。

価格設定手順がないと、次のことができません。

  • 条件タイプの計算順序を統一できず、担当者ごとに金額がずれる
  • 「小計」(課税対象額・値引前金額など)を正しく算出できない
  • 必須条件(例:基本価格が未入力なら保存不可)の強制ができない
  • 税計算や手数料計算のベースとなる金額を確定できない

逆に価格設定手順を適切に設計すれば、得意先・商品・販売エリアごとに違う価格ルールを統一的に処理できます。


他要素との関係

flowchart LR
  SA[販売エリア] --> PP[価格設定手順
RVAA01] CPP[得意先価格手順] --> PP DPP[品目価格手順] --> PP PP --> CT1[条件タイプ
PR00 基本価格] PP --> CT2[条件タイプ
K007 得意先割引] PP --> CT3[条件タイプ
MWST 税] PP --> SUB[小計
課税対象額] PP --> TOT[最終金額] style PP fill:#f0f6ff,stroke:#0053F4,stroke-width:2px,color:#0053F4
凡例 構成関係 RVAA01 = 標準SD価格手順 この記事のテーマ

価格設定手順は「販売エリア + 得意先価格手順 + 品目価格手順」の3要素の組み合わせで自動決定されます。


具体例:製造業A社の場合

架空の製造業A社が国内BtoB向けに次の価格設定手順ZJP01を定義するとします。

順序条件タイプ内容必須小計
10PR00基本価格必須-
20K007得意先割引(%)任意-
30K004品目割引(定額)任意-
40-値引後金額(小計1)-1
50KF00運賃任意-
60-課税対象額(小計2)-2
70MWST消費税10%必須-
100-請求金額合計--

PR00で100万円の基本価格を取り、K007で5%値引、MWSTで10%課税、という計算が上から順に自動実行されます。


技術的な位置づけ

  • SD(Sales and Distribution:販売管理)モジュールの価格決定の中核
  • Condition Technique(条件技法)の1要素として機能
  • 受注伝票タイプ・請求伝票タイプの両方で使われる
  • MMにも別名(計算スキーマ)で同じ仕組みが存在する

カスタマイズパス(IMG:Implementation Guide、SAPの設定ガイド)

SPRO > 販売管理 > 基本機能 > 価格設定 > 価格設定制御 > 価格設定手順の定義
  - 価格設定手順の保守(V/08)
  - 価格設定手順の決定
SPRO > 販売管理 > 基本機能 > 価格設定 > 価格設定制御 > 条件タイプの定義

主要テーブル

テーブル内容
T683価格設定手順ヘッダ
T683S価格設定手順明細(条件タイプの並び)
KONV伝票の条件明細(実計算結果)
KONH / KONP条件レコードヘッダ / 明細

S/4HANAでの変更点

  • 価格設定手順の基本概念は従来通り維持されている
  • SAP Fiori App「販売価格の管理」で条件レコードをWeb UIから直感的に保守可能
  • Condition Contract Management(CCM)と連携する場合、リベートや事後割引は価格設定手順とは別の仕組みで処理される
  • 性能面ではHANAのインメモリ処理により、大量伝票の価格再計算が高速化

現場でよくある誤解

  • 「価格設定手順=価格マスタ」ではない。価格設定手順はあくまで「計算順序の定義」で、実際の金額は条件レコードに格納される
  • 条件タイプの順序を入れ替えると、小計や税計算のベース額が変わり金額がずれる
  • 「必須」チェックをつけすぎると、受注保存時にエラー多発で現場が動かなくなる
  • 統計フラグを立てた条件は金額計算には影響しないが、レポート用に表示される

実務での決め方

価格設定手順の設計では次の観点で切り分けます。

  • 国内/輸出で税制が違うか? → Yesなら別手順
  • 得意先セグメント(BtoB/BtoC/代理店)で割引構造が違うか? → Yesなら別手順
  • 通貨が違うか?(為替条件タイプの要否)→ 必要なら別手順
  • 業界特有の条件(リベート・手数料・保険料)があるか? → 組み込むか別手順で分離

「全得意先で1つの手順を共有」は運用が楽ですが、例外が増えると条件タイプが肥大化します。3〜5手順程度に集約するのが実務上のバランスです。


トラブル事例

  • 価格設定手順の決定設定漏れで、受注登録時に「価格設定手順が決定できません」エラー
  • 小計ラインの設定ミスで、税計算のベース額が値引前になり税額が過大計上
  • 条件タイプの必須フラグを外し忘れて、値引マスタがなくても受注が通り収益圧迫
  • 統計フラグの設定ミスで、同じ割引が二重計上されて金額が半額に

FAQ

Q. 価格設定手順と条件タイプの違いは?
価格設定手順は「条件タイプを並べた計算レシピ」で、条件タイプは「1つの計算要素(基本価格・割引・税など)」です。手順は条件タイプを10個〜50個並べた入れ物だと考えてください。

Q. 1つの得意先に複数の価格設定手順を適用できますか?
できません。1つの受注伝票に対して決まる価格設定手順は1つだけです。ただし伝票タイプを変えれば別の手順が適用されることはあります。

Q. 価格設定手順を後から変更すると既存伝票に影響しますか?
既存伝票は保存時点の条件で確定しているので、手順変更の影響は受けません。ただし手動で価格再計算を実行すると新しい手順で再計算されるため注意が必要です。


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