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スケジュール明細カテゴリとは|SAP SDで納期行の性格を決める設定を実務目線で解説

目次

一言で

スケジュール明細カテゴリとは、SAPの販売伝票で納期スケジュール行(いつ・いくつ出荷するか)の性格を決める2桁の制御コードです。引当するか、所要量を転送するか、購買依頼を自動生成するか、といった挙動を定義します。


なぜスケジュール明細カテゴリが必要か

販売伝票明細には「納期ごとの数量(スケジュール行)」がぶら下がります。同じ品目でも、在庫から引き当てるのか、生産指図を起こすのか、外部から直送するのかで挙動は全く違います。スケジュール明細カテゴリは、その1行1行の納期行がどう振る舞うかを定義する最小単位の制御オブジェクトです。

これがないと、次のことができません。

  • 在庫引当(ATP:Available-to-Promise、利用可能在庫チェック)の実行可否を行単位で制御できない
  • MRP(Material Requirements Planning:所要量計算)への所要量転送の要否を切り替えられない
  • 直送受注で購買依頼(Purchase Requisition)を自動起票できない
  • 見積・打診など在庫を動かさない行を在庫引当対象から外せない

逆にスケジュール明細カテゴリを適切に設計すれば、同じ販売伝票タイプの中でも行ごとに柔軟な挙動を実現できます。


明細カテゴリとの関係

flowchart LR
  ST[販売伝票タイプ
OR 標準受注] --> IC[明細カテゴリ
TAN] IC --> SL[スケジュール明細カテゴリ
CP 通常] IC -.-> SL2[スケジュール明細カテゴリ
CN 無計画] IC -.-> SL3[スケジュール明細カテゴリ
CV 完了] SL --> ATP[ATP在庫引当] SL --> MRP[MRP所要量転送] SL -.-> PR[購買依頼自動生成] style SL fill:#f0f6ff,stroke:#0053F4,stroke-width:2px,color:#0053F4
凡例 親子関係(決定連鎖) -.-> 条件により選択/発動 この記事のテーマ

スケジュール明細カテゴリは、明細カテゴリと品目マスタのMRPタイプの組み合わせから自動決定されます。1つの明細カテゴリに対して複数のスケジュール明細カテゴリが割り当てられ、条件次第で切り替わる仕組みです。


具体例:標準受注(OR)の場合

標準受注(OR)+明細カテゴリTAN(標準品目)の場合、代表的なスケジュール明細カテゴリは次の通りです。

コード名称挙動
CP通常(MRPあり)ATP実行、所要量をMRPに転送
CN無計画納入ATP実行なし、所要量転送なし
CV完了納期行は閉じられ、以降引当対象外
CB個別発注購買依頼を自動生成(直送・個別調達)

同じTAN明細でも、品目のMRPタイプがND(No Planning)ならCNが、PDならCPが決定されるといった具合に切り替わります。


技術的な位置づけ

  • SD(Sales and Distribution:販売管理)の販売伝票明細の下位に存在する納期行単位の制御オブジェクト
  • 引当区分(ATP要否)・所要量転送区分・移動タイプ・伝票タイプ(購買依頼)など複数のフラグの集合体
  • 納入可能性チェック・直送・個別調達・見積の挙動を1つのキーで束ねる

カスタマイズパス(IMG:Implementation Guide、SAPの設定ガイド)

SPRO > 販売管理 > 販売 > 販売伝票 > スケジュール行 > スケジュール行カテゴリの定義
SPRO > 販売管理 > 販売 > 販売伝票 > スケジュール行 > スケジュール行カテゴリの割当
トランザクション: VOV6 (定義) / VOV5 (割当)

主要テーブル

テーブル内容
TVEPスケジュール明細カテゴリマスタ
TVEPZ明細カテゴリ×MRPタイプ→スケジュール明細カテゴリ割当
VBEP販売伝票スケジュール行

S/4HANAでの変更点

  • aATP(Advanced ATP:高度納期回答)の導入により、スケジュール明細カテゴリの引当挙動がBOP(Backorder Processing:未出荷受注の再引当)と連動
  • 直送(Third-party)シナリオではS/4HANAの「Advanced Available-to-Promise」フレームワーク配下で購買依頼生成が高速化
  • カスタマイズ項目自体は基本的にECCから継承されているため、アップグレード時の再設計は最小限

現場でよくある誤解

  • 「明細カテゴリを決めればスケジュール行の挙動も自動で決まる」と思いがちだが、実際はMRPタイプとの組み合わせで決まる
  • CPとCNの違いを理解せずに設定すると、MRP側で所要量が見えない・逆に引当エラー頻発などの問題が発生
  • 直送用のCBを汎用TAN明細に割り当ててしまい、全受注が購買依頼を起票してしまう事故
  • スケジュール明細カテゴリは「納期行1行に1つ」つく。納期分割すると同じ明細の中で複数のスケジュール明細カテゴリが混ざることがある

実務での決め方

スケジュール明細カテゴリ設計では次の観点で切り分けます。

  • 在庫引当が必要か? → 必要ならATP実行フラグON
  • 所要量をMRPに渡すか? → 将来の計画対象なら転送フラグON
  • 外部から調達するか? → 直送ならCB(購買依頼自動生成)
  • 見積・打診で在庫を動かしたくないか? → CN(無計画)系を使う

「とりあえず標準のCPでいい」と思っているプロジェクトが一番危ないです。明細カテゴリとMRPタイプの組み合わせマトリクスを受注パターン別に必ず設計段階で洗い出しておきましょう。


トラブル事例

  • 直送シナリオで明細カテゴリをTANのままにし、スケジュール明細カテゴリCPが決定されてしまい購買依頼が起票されず
  • MRPタイプをND(計画なし)にしたらスケジュール明細カテゴリがCNに切り替わり、納期回答が常にゼロに
  • 納期分割された明細で一部だけCVに書き換わり、以降の引当から漏れた
  • 見積用の伝票タイプで引当が走ってしまい、在庫が見かけ上不足する事象

FAQ

Q. スケジュール明細カテゴリは受注登録時にユーザーが選べますか?
通常は自動決定です。明細カテゴリと品目マスタのMRPタイプの組み合わせから決まります。設定次第で手動変更を許可することも可能ですが、基本的には自動に任せます。

Q. 直送と通常販売で明細カテゴリを分ける必要はありますか?
原則分けるべきです。直送用はTAS(Third-party Item)という別の明細カテゴリを使い、そこに購買依頼生成フラグ付きのスケジュール明細カテゴリ(例:CS)を割り当てるのが標準設計です。

Q. スケジュール明細カテゴリを新規作成するのはよくあることですか?
標準のCP/CN/CV/CB/CSで足りることが多いですが、引当ルールや移動タイプを変えたい場合に新規作成します。ただし独自カテゴリは保守負担が上がるので、本当に必要な場合に限定してください。


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